求職者の数だけでは見えない問題
製造・生産工程の仕事を希望する人が多いなら、企業は必要な人材を確保しやすい――そう考えたくなる。しかし、労働市場では「何の仕事を望むか」だけでなく、「どこでその仕事を望んでいるか」が重要になる。
総務省の就業構造基本調査によると、2002年10月に日本全国で製造・生産工程の仕事を希望していた求職者は467000人だった。これは、その時点でこの職種への関心を示す大きな集団が存在していたことを表す。一方で、全国値だけを見ても、働き手と仕事が実際に出会えていたかどうかは分からない。
求職者が暮らす地域と、企業が採用したい地域が離れていれば、統計上は人と求人が存在していても、採用には結び付きにくい。仕事探しには職種の一致だけでなく、通勤可能性、転居の負担、住居、家族生活なども関係するからだ。
地域別の数字が示す分布
同じ2002年10月の調査では、製造・生産工程の仕事を希望する求職者数に地域差が確認できる。以下はいずれも2002年10月時点の数値であり、その後の状況を示すものではない。
| 地域 | 製造・生産工程の仕事を希望する求職者数 | 時期 |
| 日本全国 | 467000人 | 2002年10月 |
| 埼玉県 | 29500人 | 2002年10月 |
| 北海道 | 16000人 | 2002年10月 |
| 茨城県 | 13600人 | 2002年10月 |
この表から分かるのは、この時点の求職者が全国に均等に存在していたわけではないということだ。ただし、人数の違いをそのまま「仕事の見つけやすさ」や「地域経済の強さ」と読み替えることはできない。人口規模が異なるうえ、ここに示されているのは求人件数でも、採用者数でも、賃金額でもないからである。
また、埼玉県、北海道、茨城県という一部地域の数字だけを比較して、日本全体の地域構造を断定することもできない。この資料から言えるのは、2002年10月時点で、製造・生産工程を希望する求職者が地域ごとに異なる規模で存在していたという点までである。
賃金を考えるときにも「場所」が欠かせない
仕事と賃金を分析する際、職種名が同じなら同じ労働市場に属すると考えがちだ。しかし、働く場所が違えば、求職者が比較できる求人の範囲も変わる。この調査時点のように、ある地域に希望者が多く記録されていても、その地域に十分な仕事があったとは限らない。反対に、企業が採用を望む地域に求職者が少なければ、募集条件の見直しが必要になる場合もある。
ここで重要なのは、賃金を単なる労働の価格として切り離さないことである。提示された賃金が魅力的に見えても、長距離の移動や転居が必要なら、求職者にとっての実質的な選択肢にはならないことがある。逆に、賃金だけでは目立たない求人でも、居住地から通いやすければ応募可能な仕事になり得る。
したがって、職種別の求職者数は、賃金水準を直接説明する指標ではない。それでも、企業と働き手の交渉が行われる範囲を考えるための基礎情報にはなる。誰がその仕事を望んでいるかに加えて、その人がどこにいるかを見ることで、当時の採用難や就職難をより具体的に捉えられる。
ポルトガル語圏の読者が読み取れること
この日本の統計から得られる論点は、特定の制度や補助金に依存しない。他の国や地域でも、広い全国値だけで労働市場を判断すると、地域内の不一致を見落とす可能性がある。
製造・生産工程のように、職場の所在地が仕事の実行場所と強く結び付く職種では、とりわけ地理的な視点が重要になる。求職者数を読むときには、求人の所在地、移動可能性、賃金、雇用条件を別々に確認し、それらが重なる範囲を考える必要がある。
この視点は、「働きたい人がいるのに採用できない」「求人があるのに就職できない」という、一見矛盾した状況を理解する助けになる。この種の状況は、働く意思の有無だけでは説明できない場合がある。希望職種と勤務地が同時に一致していない可能性があるためだ。
古い統計を現在の判断に使わない
ここで扱った数値はすべて2002年10月の状況を示す。それ以降の求職者数や地域分布を表すものではなく、この記事もその時点までの範囲でしか語っていない。そのため、この数字を使ってそれ以後の採用環境、賃金動向、製造業の状態を評価することはできない。
この資料の価値は、人数そのものを知らせることよりも、労働統計の読み方を示すことにある。先述した全国および主要地域の数値のように、まず全体の規模を確認し、次に地域ごとの分布を見て、さらに求人や賃金など別の指標と組み合わせる。そうすることで、「人がいるか」という単純な問いを、「希望する仕事が、実際に働ける場所にあるか」という、より現実的な問いへ変えられる。
出典
- 総務省「就業構造基本調査」https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0000141889